SFGレギュレーション & メカニクス

競技レギュレーション/マシンレギュレーション
この資料集は執筆に際して作者が参照するための「覚え書き」です。
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■ フォーミュラギア(FG)
 FIFCの統括するロボット格闘興行に使われるロボットの総称。それぞれのカテゴリで、規格が定められている。最高峰の世界的イベントはSFGと呼ばれるカテゴリで、FG1(エフジー・ワン)とも呼ばれる。

 メーカー参入が激しく、トップチームには技術的なもの以外にも、経営的にもなんらかの形で関わっていることが多い。

 FIFCではSFG(FG1)、FG2、FG3等の他にも、市販ギアベースのマッチも統括している。
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● スーパーフォーミュラギア (Super Formula Gear)
 FGの最高峰カテゴリ。世界の準FGから集まってきた強者たち20人によるタッグマッチ形式。年15~17戦行なわれ、世界中を転戦する。
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● ロボットとギア
 ロボットは「自律」を前提とするものだが、ギアは操縦者の手足或るいは身体そのものとなって動作するもので、少なくともその制御に関する概念はかなりの部分で異なる。操縦者の意思を反映した動きをさせる場合には、自律型ロボットととはまた違ったテクノロジーが必要なのだ。

 さらにギアはロボットには必要ない「操縦系」や「居住性」の他に、「余分な重量(=人間)」を抱えるものである。末端の駆動系、電装系やコアとなるフィールド・ジェネレータの技術こそ共通だが、ロボットとギアは自律他律という相反する性質のゆえに分化し、それぞれ取り込む技術を異にしながら発展していったのだった。

 このふたつが分化して進化し始めたためにいわば自然的に生まれたのが、20世紀から21世紀の初めの頃に盛んだったロボットコンテストに端を発した、ギアによる高度操縦技術競技であった。

 好事家が集まり、玩具のようなものを戦わせるだけのものであれば前世紀にもあったが、人間が搭乗して操作し、その優劣を競う──走ったり体操をしたり──コンテストが本格的に始まったのはようやく2020年代に入ってからのことである。

 大学機関や企業が毎年お祭りのようにしてコンテストに参加するようになって10年が過ぎ、ドイツのある企業がついにアームド・ギアの販売を開始した。
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● FGグランプリの発祥
 金持ちのオーナーたちが集まり、私有地でカスタマイズしたギアを自慢しあったパーティから、FG1グランプリは始まったといっていい。オーナーたちは自ら、または雇った専用のドライバーに操縦技術を磨かせ、そして純粋なスポーツとして競い合ったのだった。

 やがて日本やアメリカのメーカーも業界に参入、ギアオーナーたちは2~3年のうちに各機種間の格差を埋めるためにいくつかのルールを制定する必要があることを痛感する。そして翌年、第1回のFG1グランプリ開催の運びとなったのである。(当初は重量規制、瞬間最大出力へのリミッタ付加、競技時限の制定くらいであった)

 参加台数は3社8台。ヨーロッパの近接する5カ国でのみの開催である(参加した8人のオーナーのそれぞれの母国である。フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、イタリア)。
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● FGグランプリの発展
 最初の10年ほどはメーカー製ギアの改造品を競技に使用していたが、後には全チームが独自に設計したギアでグランプリを戦うのが普通になった。金さえかければ一般でも市販品以上の性能を持つギアを作れる技術的土壌が確立してきたのだ。

 直接の対決は、勝った場合の効果は絶大だが、負けた際のイメージダウンも計り知れない。メーカー自身が直接参入することはリスクの面から憚られていたが、最近ではシェアの奪い合いや、メーカーそのものの生き残りを賭けてチームを買い取るなどして勝ちを狙うメーカーも増えている。
■ FGマシン概要
 二脚歩行(右脚、左脚)。マニピュレータも2本(右腕、左腕)。
 ホイールによる走行(フィールド・モーター)が認められている。

 形態に関しては基本的には自由だが、二脚歩行のレギュレーションの細則には、股下の最低長、制御プログラムの機能制限等が盛り込まれており、それに従うと、ある程度似通った人型になる。

 操縦系統に関しては、全チームの全マシンが完全なドライブ・バイ・ワイヤ。
 現在のSFGマシンはすべて2スティック・2ペダル。HOS(ハンズ・オン・スティック)の概念により、初期起動時・緊急時に使用する以外のすべての制御・操作に関するボタンの類いは左右のスティック(操作レバー)上に配置され、ドライバーは競技中にスティックから手を離すことなくマシンを機動させることができる。

 FGマシンのほとんどの可動部はジェネレータからの制御信号+エネルギー波を直接受け取って動作する。その構造と動作原理は人間における筋肉+神経系のそれとはまったく異なるものである。



 FGの静的安定には Posture Control by Swaying(揺らぎによる姿勢制御)技術が用いられる。レバーを放してほうっておくと、立ち止まって直立する基本性質がある(むろん電力のある間のみ。電圧が低下して安全装置が働くと、自動的に中腰から擱座姿勢を取る)。単純に言うと、いかなる場合にも、ギアは自身の姿勢の安定を取り戻そうと「し続けて」いるのだ。そして動的制御は、そのバランスを「崩し続ける」ことで行なわれる。

 単純に言ってしまうと、姿勢補助として認められているPCSをいかに動的制御にうまく組み込むかが、開発者の腕の見せ所になる。これはソフトだけの問題ではないため、機体設計者や制御プログラム開発者のもうひとつ上位に立つディレクターの能力が問われるのである。
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● PCS(Posture Control by Swaying…揺らぎによる姿勢制御)
 二足で直立するFGでは、基本姿勢制御にPCSが用いられる。
 FGはPCSがなければ一瞬たりとも安定して立っていられない。

 PCSの概念を解りやすく説明すると“手のひらに立たせた長棒”にたとえられる。棒を安定して立たせておくためには、絶えず棒がバランスを崩した方向へ手を移動させることが必要である。この連続した“ゆらぎ”の動作を司るのがPCSとなる。

 FGマシンの場合は手のひら上の棒とは異なり、関節をもち複雑に可動する立体である。可動により立体全体の重心も変化するため、PCSは実際には上記のたとえでは説明しきれないほど複雑な制御を行なっている。

 しかしながら、この制御は機体各所から送られてくる事細かな位置情報(傾斜センサや、モーターの動作状況といったもの)を基に決定されているわけではない。なぜなら、FGマシンの大きな特徴として「配線の省略」が挙げられるからだ。それはエネルギーを伝達するためのものばかりか、各部の状況をフィードバックするセンサの数をも極端に少ないものとする。

 マシンの次の瞬間の行動の決定については、まさに“手のひらの棒”ほどの単純な状態把握によると思ってもらえばよい。「現在、どのような姿勢であるか」よりも「どのようにバランスを崩しかけているか」のみを監視していると言えば解りやすいか。

 各パーツへの動作の指示は実際に数値情報を出さねばならず、このパートについてはかなり複雑怪奇、またPCSの最重要要素といえる部分である。
 このパートを特にACS(Adapting Control System)──適応制御システム(後述)という。
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 ではまずPCS全体の機能について解説する。

 概念的に説明すると、PCSは手足を含めたマシンの構成要素(関節によって分割される単位)をすべて重心制御に利用している。PCSにとっては要するに手足、という把握ではなく、すべてが重心決定のための要素にすぎない。そのためウィングや装甲板といった付加構造物ですらその一部になりうる。

 さらにFGの姿勢制御を理解するために重要なのは、関節についての理解である。
 PCSは姿勢制御を関節中心では考えない。かならず、すべてのパーツをおのおの要求する位置にもっていこうとする、そのために関節を動かすだけである。

 そのためFGの各関節の可動範囲はさほど大きくない。脚の関節などはほとんど“揺らぐだけ”に等しい。それでもFGはバランスを損なうことなく立ち続けることができる。
 PCSの優れたところは、その制御法がもたらす負荷の少なさにある。関節に大きなエネルギーと負担をかけずに姿勢制御を行なうことができるのだ。
 FGに実装されているPCSは、かならずしも人間が一般的に行なっている動作をもとに構築されたものではない。より合理的、かつ効率的なものといえる(しかしながら、PCS的な身体の制御を人間が行なうことは不可能ではない)。

 合理的であるがゆえにFGマシンは、人間には一種理解しがたい挙動を示すことがある。特に最高峰のSFGのマシンのPCSは特殊かつ強力で、下位カテゴリから来たドライバーの中にはうまく扱えない者もいるほどだ。

 ここで誤解してはならないのは、たとえば腕であれば1つのパーツが中心となり、それに付随するパーツが連動して動くのではないということである。すべてのパーツが同時に次の移動点へ動こうとする。その積み重ねでFGの姿勢制御は実現しているのである。
 手のひら上の棒でたとえるならば、棒が倒れ始めてから手を動かし、それに従って棒の上部が手のひらの上に移動し安定するのではなく、それらの動きは同時であり、連続的であり、かつ継続的になされる。
 仮にPCSに手のひらの制御を行なわせた場合、端から見ると棒は手のひらの上で静止しているように見えるだろう。それくらいPCSの能力は優れているのだ。

 したがってPCS動作時のFGは、“PCS(揺らぎによる姿勢制御)”と名がついているように、ゆらゆら揺れながら立っているというわけでは決してない。
 またPCSは先を予想する機能は持っていない。あくまでもその瞬間において最適な姿勢制御の指示を出し続けているだけである。
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 次に、PCSの動作をキャンセルさせることになる「ドライバーの操作」について述べる。

 全身のあらゆるパーツを使って姿勢を安定させようとしているPCSにとって、ドライバーの操作というのは、それに真っ向から抗うものである。

 たとえば腕の関節がなんらかの原因で故障した場合、PCSはその腕そのものを姿勢制御のためには使うことができない。しかしその他の部位だけで安定をはかることは難しくない。仮に片腕が動作不能に陥ったところで、全身のパーツでバランスをとるPCSにとってはさしたる問題とはなりえないからだ。
 PCSはマシンのバランスを、“棒”あるいは“重心点をもとに決定した身体の基準の1点”といった単純な概念で把握するが、実際の安定制御は身体の各部位を分割するという概念を用いて行なっている。
 このとき、分割された各部位から見ると、他が動く動かないにかかわらず、自らがどの位置に移動すればいいかということだけが問題となる。よって故障などにも強く、センサの計測誤差などとも無縁である。

 しかしながら操縦者の意図によりたとえば腕部に任意の動き(照準など)をさせている場合など、身体(またはその一部)をあらぬ方向へ持って行かれるため、より不安定な想定外の状態へと強引に変化させられてしまうことになる。これはFGの安定にとっては、想像よりもはるかに危険な状態であるといえる。

 それでも、PCSは休まずに次の行動を選択し続ける。
 連続的にそれを行なうことで、「安定を取り戻そうとし続ける」状態を作ることができるからである。原理的には、障害物がない場合は、たとえホイールが空転(スピン)する路面状態であろうと、PCSは不安定な自身の姿勢を連続的に安定状態へと導くことができる。それゆえ、「転倒」はあり得ない。
 二足走行式のロボットであるFGにとってほとんど競技など不可能と思われる荒天下でも、PCSのおかげでドライバーは現実的にFGを操ることができるのだ。

 ドライバーの操作が続いている間は、姿勢安定的に危険な状態であることは一瞬たりとも変わらない。ただし、同時に「安定し続けようと」しているという側面もあるために、過激な動作もある程度は許容できるのである。

 ただし実際の競技中ではしばしば転倒という事態を見かける。
 これはPCSがとり続けている姿勢制御の動作を上回る外的入力(ドライバーの過剰な操作、障害物などの物理的な実行阻害要素など)が連続的になされ、ある力学的な臨界点を超えたときに発生する。
 雨天下などではそうした現象は当たり前だが起こりやすい。前述のようにPCSは時としてドライバーの予想できない動作を行なうことがあり、スリップしやすい路面状況では、それが突発的に発生することがある。
 その際、姿勢制御をしようとするPCSの挙動に対してドライバーが意図せずにそれに抗する、もしくは助長するように過剰な入力をしてしまうと、最悪の場合は転倒してしまうことになる。

 また故障によっても「力学的な臨界点」は低まるため、転倒などは起こりやすくなる。
 極端な例でいうと、全身の関節を固定され、肩だけが動かせる状態では、腕を振り回すことでバランスをとり続けなければならないが、PCSのバランサーとしての機能は人間よりもはるかに優秀なため、ほとんどその腕すら動かさずにバランスをとることができる。しかしこれに「前傾させる」という外的入力が加え続けられれば、転倒はまぬがれないであろう。

 それでも最高峰のSFGマシンになると、他のカテゴリや市販ギアなどとは比較にならないほど臨界点が高いところにある。なぜならパーツの重量は極限まで削り込まれ、関節のトルクや反応速度も桁違いであるからだ。そのためSFGマシンは、動作特性そのものが他とまったく異なる。
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● ACS(Adapting Control System…適応制御システム)
 PCSの概念自体はFGマシン固有のものではなく、この世界の自律・他律を問わないロボットのほとんどすべてに類似のシステムが搭載されている。しかしPCSのもつこうした基本性質を実現するACSというパートについては、ほとんどFGマシンのオリジナルであり、さらにいえば各チームやマシンによっても異なっている。
 PCSが司るバランサーとしての動作そのものは、ACS(適応制御システム)の指令によって実現している。具体的な数値を算出し、マシン各部位に送る役割を担うACSの設計は、マシンの設計者がもっとも苦慮する部分である。

 ACSのプログラムがおもに行なっているのは、現在のマシンのバランスの状態をもとに、最適行動を決定することである。
 決定に要する要素は、マシンの現在の状態、ドライバーの操作のふたつである。
 本来であれば、ドライバーがどのような操作をしようともマシンの状態さえ見ていればPCSは機能する。つまり、PCSにとって最適解は常に1つである。しかし、それでは競技に勝つのが至上のFGマシンには不充分である。よって設計者は、最適解の求め方の指針をACSに与える際、たとえばドライバーの意図を汲むような動作になるよう調整するのである。

 ドライバー側からすれば、無調整のACSでは、強固なバランサーシステムであるPCSが自分の操縦に対して常に干渉(≒抵抗)を続けているように感じられる。しかし最適化されたACSでは、あたかも干渉の度合いを自動調整しているように見えるのである。

 このように、各ドライバーに適した状態にPCSを微調整することで、FGマシンはより戦闘力を増すのである。
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 こうしたPCSの特性に早く馴染めるドライバーは、優秀である。
 また、そうしたドライバーはPCSの機能を逆手にとった操作をし、より高度な操縦を行なうことがある。
 前述のように、PCSの動作制御は単純に自らの安定のみを目的としたもので、ドライバーの望む行動に対しては必ずしも有効ではない。しかしPCSをうまく利用する方法はある。
 PCSの姿勢制御動作に逆らわず、逆にそれを次の動作へ結びつけて、わざと能動的に動かしてやることで、さらに効率的にマシンを機動させることが可能である。
 ただし、これは誰にでもできるというものではない。
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 以下は余談である。

 ワールドチャンピオンクラスのドライバーは、意識的にしろ無意識的にしろ、そうした操縦を少なからず行なっている。

 キャラ・ブラウニーの操縦は、しばしば観客から“優雅”と評されるが、これはPCSの本質から外れる「流れるような動作」をうまくその性質に合致させる形で取り入れているからである。
 彼女の操縦はおもに意図的に重心を移動させ、移動した重心に対してとられるPCSの姿勢制御を利用して、次の動作へ効率的につなごうとするスタイルである。
 彼女自身が“優雅”であるかどうかは関係なく、観客から見ればそのマシンの動きは線でつないだように美しく見えるわけである。

 また当代随一のドライバーといわれるフィリップ・レンツは、ほとんど“人間PCS”ともいうべき操縦能力をもっている。彼はPCSがなくてもマシンを転倒させずに維持できるのではないかというくらい反応速度がはやく、かつ理にかなった動きをさせることができる。
 ほかのマシンとその操縦者に比べると、たとえ同じコンディションのマシンを操っていても、全体的にきびきびとして、無駄がない。方向転換も、スムーズというよりはクイックである。

 もちろん競技においての強さは操縦技能だけによるものではないが、少なくともこの方面の素養に関しては、現時点ではこのふたりが最高峰といえるだろう。

 主人公のフェリスの操縦方法であるが、彼女は前述のPCSの姿勢制御動作を外的要因が上回るか上回らないかの、ギリギリのあたりの操作を好んで行なう。
 フィリップ・レンツのような超人的な技能まではないにせよ、PCSの姿勢制御限界を超えそうな高速バトルは、他に対して大きなアドバンテージを生む。自身の転倒の危険も少なからずあるが、相手にしてみれば照準がつけにくいばかりでなく、追尾のために無理な機動を誘われるため、不安定になりやすいのだ。

■ 設計上の制約、細則等
 頭頂高5.5m、ドライバー含む最低重量1.6t

 集中センサユニット(頭部)の設置位置、サイズ等の規格あり。
 エネルギーパックは共通規格のものを使用。


 センサは光学式のもののみ認められている。センサで得た映像情報は1つの高輝度液晶ヘッドアップディスプレイに表示される。
 金属、音響、振動、電波(赤外や超音波含む)等による探知や、映像のコンピュータ解析(パターン認識等)による敵機捕捉は不可とされている(ドライバーは自分の目と耳と勘を頼りに索敵するのである)。

 脚部は複数シリンダの内骨格型、腕部はステップ・モーターを用いた関節構造が主流。

 銃撃においては、五指のマニピュレータによるトリガー操作が義務づけられている(マニピュレータにトラブルがあると、銃を取り落としたりするシーンが見られることもある)。

 マシンの操縦は、なるべくマニュアルの部分を多く残すように細かくレギュレーションで定められている。脳波等による操縦は不可。ただし音声認識を利用した操作は、単語数制限はあるものの、認められている(文脈解析は不可。コマンド入力のみ)。
 その他、モニタの情報表示切り替えや、照準システム等に視線誘導式カーソルシステムを使用することができる。
■ マシン構造
 ボディワークのほとんどはカーボン・コンポジットで構成される。一部FRP等も使用される。  柔軟金属(プライアブル・メタル)などのレアメタル系変形素材の使用は禁止されている。

 ジェネレータを背面の芯とし、腰部とともにコクピット・ブロックを支える構造。マニピュレータ(腕部)の基部はコクピット・ブロックではなく、ジェネレータの殻構造部品に結合される。よってFGの立体は、ジェネレータの剛性をたよりに成されていると言える。

 高速走行をするために重心を下げる努力が払われている他、空気抵抗を減らすためのボディワーク(空力的処理)、ウィングの装着も認められている。
 ただし近年では、PCSによる重心制御の安定向上やドライバーの技術的レベル向上により、必ずしも高い重心が姿勢制御に不利、とは限らないようである。むしろ反動や慣性をうまくコントロールすることで、ひと昔前には突飛すぎたプロポーションのギアの機動性や安定性は、飛躍的に向上している。
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● 腕部
 射的能力が重要なFGでは腕部の動作制御に特別な注意が払われている。
 基本的に標的は腕部全体を使って照準するが、走行時の振動による照準のブレは、高度な技術を用いた複合(構造自体はそれほど複雑ではないが)手首関節を使って打ち消す(腕全体で吸収することも可能だが、独立していた方がPCSとの兼ね合い上、有利)。
 腕部関節でもっとも先進の技術が用いられているのは手首部分である。後述するが、照準の自動追尾機能の搭載は認められないので、あくまでこれは銃の安定した保持のための機構である。FGの手首は回転したり内側に曲がったりなどの人間的な動きはまったく行なわれない(概念的にはボールジョイント風)。
 肘関節は照準時の応答性を高めるために2重関節を採用するところもあるが、その分重量増につながる。
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● 腰部
 腰部は姿勢安定の要であるが、FGの構造上一番無理のかかる部分でもある。
 またダメージを受け、破損した場合には4m以上の高さからコクピットが地面に叩きつけられることになりかねない。そのため関節周りに衝撃吸収外装の装着が義務づけられている。負荷テストも厳重に行なわれる。

 臀部にエネルギーパック(Eパック)のソケット。1回に搭載するEパックの数はチームの作戦により変化する。ソケットの取り付け位置は重心やバランスに大きく影響するので、チームによりまちまち。ただし、競技中のEパック交換をスムーズに行なうために、デザイナーはなるべく低い位置になるよう腐心している。またそれぞれのチームが専用の装填機を開発している(たいていは年ごとに形式が変わる)。
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● 脚部

 脚部は姿勢を制御するための剛性と柔軟さを動的に確保するため、油圧シリンダ、磁力サスペンション、トーションバーなどの組み合わせで骨格を構成する。FGの脚部は、いわゆるロボットの関節といった概念からはほど遠い構造になっている。むしろ人間の骨と筋肉の両方の性質を備える部品で構成された、内骨格型である。

 ホイールは内蔵ではなく、剥き出しで脚部に装着されている。ホイール部分自体が回転体となる(ジェネレータからのエネルギーをダイレクトに受けて回転する、コアレスモーター)。そのためFGマシンに物理的なギアボックスは存在しない。
 タイヤはスリックで、幅やコンパウンドなどの規定ももちろんある。ブレーキはカーボンディスク。タイヤのサプライヤーの中には日本のメーカーもあるようだ。
 溶けて粘着し、すり減りながらグリップを確保する特性のため、普通は競技中に1~2回の交換を必要とする。

 FGマシンの操縦に際して「ギア」という時、走行モードのチェンジ、または走行方向の切り替えのことを指す場合がある(古い時代の走行システムの名残であり、現在ではほとんど使われない)。
 FGマシンは後ろ向きに走行できる。またブレーキは左右のホイールで独立式となっており、信地旋回もできる。だがギアは左右のホイールで前・後のいずれかにしかセットできない(超信地旋回は不可能)。
 信地旋回時は、動的制御をし続けている状態のためPCSの反応が薄くなる瞬間でもある。そのためバランスを取るのが非常に難しく、高度なテクニックとされている。またうっかりブレーキをかけた方のホイールをロックさせると、タイヤにフラットスポットが出来るので敬遠されている。フラットスポットは摩擦によりタイヤの表面に平坦な部分ができたもので、走行時の異常振動の原因になる。
■ ジェネレータ
 ジェネレータは電磁フィールド発生機であり、腰部および脚部など、特にトルクの必要とされるいくつかの特殊なフィールド・モーター、アクチュエータ、および人工筋肉的な構造体であるシリンダやサスペンションのための磁場を形成する、FGの最重要構造品である。

 特殊な干渉磁場を生み出すことにより、特定の部位のフィールドモーターやシリンダにエネルギーを送り込み、作動させることが可能。コクピット内の人体への電磁波等による影響はないとされている。

 このようなフィールドモーター方式を採用する利点は大きく2つある。

 フィールドモーターはステップモーター並に構造が簡単で(モーター自体の大きさや重量を自由に設計できる利点がある)、緻密な制御が可能であり、しかも大トルクを得られるという点。ただし、その分電力のロスも大きく(変換効率の問題。電気エネルギーの100%を駆動部に伝達することは、物理的に不可能)、一般に出力を重視するとエネルギー消費は激しくなる(車で言えば燃費に相当する)。

 2つ目は、配線が省略できる点である。単純にマシン重量の削減に大きく貢献するばかりでなく、断線による故障確率の排除、メンテナンスの労力の軽減等、得られる効果は大きい。

 ジェネレータが持つ熱をうまく排出できないと、フィールドの出力効率が悪くなる。FGでは上半身の重量増を嫌うために空冷式となっている。そのため、FGマシンはある程度高速で運動し続けないとエネルギーがそれだけ早く尽きてしまうことになる。

 このジェネレータ技術は現在でも日進月歩で発展しており、より変換、出力効率の高いジェネレータを生み出すために、サプライヤーは鎬を削っている。電磁フィールド発生機としてのジェネレータの技術は、ロボット分野に限らず各方面に応用されており、SFGのグランプリは企業の開発実験場としての役割を果たしていると言える。
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■ コクピット
 コクピットは人間で言えば胸部に当たる部分(モノコックボディ内)にあるが、居住空間は極端に狭く、また重心低下の要求から、深く座る姿勢(フル・リクライニング状態)をドライバーに強いる。


 コクピットはカーボン・コンポジット・モノコック(カーボン、ケブラー繊維等の積層)。それ自体がサバイバル・セルとなっており、左右前後と上面からのクラッシュテストをシーズン前に受ける必要がある。

 ちょうどドライバーの頭上に当たる部分には、コクピットの剛性確保や転倒・落下時のドライバー保護のために、ロールフープが内装されている。

 コクピットは完全閉塞式(格闘戦を行なうため)。事故発生時にはイエローコーションの信号を確認した後に内部から開けられる仕様にすることが義務づけられている。

 コクピット内壁には衝撃吸収用のクッション・ブロックが張り巡らされている。モニタは前面1基。高輝度液晶で、クラッシュ時には壊れることで衝撃を吸収できるような部品(このような部品をクラッシャブル・ストラクチャーと言う)となっている。

 コクピットへのアクセスは頭部を支える基部を開くことで行なわれる。マシンの頭を前に倒すように開き、ドライバーは首から乗り込む。
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● シート
 シートはドライバーごとのオーダーメイド(それぞれ体型が異なるため)。
 ただし事故発生時にドライバーをシートごと速やかに搬出できるようなアタッチメント構造にすることが義務づけられている(アタッチメントはFIFCの共通規格)。
 ベルトは五点支持が多い。ヘルメットの装着は義務。フルフェイス、フルカバーのものを使用する(ヘッドギアは使われない)。
 また、ベルトの他、瞬間的な衝撃からドライバーの頭部や頸部を保護するHANSの装着も義務化されている。

 モニタはHUD(Hed Up Display)であり、MFD(Multi Function Display-多目的表示装置)である。カメラの映像表示の他、各種の戦闘情報を同時表示できる。
■ その他の付加構造物
 ボディ形状は、空力的に有利に設計することにより、抵抗を減らすことが期待できる。抵抗は、少しでも長い時間稼働したいFGにとっては、それがたとえわずかなロスであっても致命的になりかねない。FGのアウトラインがシャープで、かつ表面も平滑に仕上げられているのはそのためである。

 FGマシンにおいては、ウィングはダウンフォースを得るためよりもむしろ、慣性制御の「おもり」として機能する。安定性や、運動性能向上に欠かせないこれらのウィングは、FGではこの故に特に「カウンターウィング」と呼ばれている。
 かつてこのカウンターウェイト(おもり)がおもりの役にのみ使用されていた時代には、腰部後方からあたかも尻尾のように突き出した姿を指して「フォックス・テール」と呼んでいたこともある。
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 姿勢制御の補助としてボディ脇にエアジェットの噴射口が設けられた機体もある。これは圧縮空気を瞬間的に高圧で吹き出し、その反動で姿勢制御を行なうというものである。試合中に使用できる回数が容量の関係で限られるにもかかわらず比較的大がかりな装置が必要なため、重量的に有利な女性ドライバーを乗せているギア以外では採用することはあまりない。ただし、うまく使えば相手の意表を突くかなり有効な機動が可能になるため、軽視できない装備である。使用時に特有の鋭い噴射音がする。またピット内では自動的に安全装置が働き、作動を抑制する。

 他の標準武装としては、時限式の投下爆雷(要するにボンバーマンをやるわけだ)などがある。ただし、こういったイロモノの武器を使用するゲームは、次の年にすぐ廃止されたりすることも多い。ちなみに2048年のシーズンでは爆雷の使用は認められていなかった。
 また、エアジェットシステムも2049年には禁止されている。
■ ドライバー
 FGの乗り手のことを通常は“ドライバー”と呼ぶが、パイロットでも間違いではない(ちなみに戦闘機などでもF15乗りのことを“イーグル・ドライバー”と言ったりする。これに関しては完全に筆者の趣味。

 年齢制限等に明確な規定はないが、SFGへの出場にはFIFCの認定するライセンスが必要。
 FG3はB級、FG2はA級のライセンス、SFGではスーパーライセンスが必要である。スーパーライセンスは、通例としてFG2に半年以上乗っていれば発給される(フェリスはFG3を1年、FG2を3戦しかしていない。多分に政治的なやりとりがチームとFIFCの間であったものと思われる)

 ドライバースーツの着用は義務。ちなみに、着用しないとおそらくあらゆる水平方向からのGにより、体中が擦り傷だらけになる(もちろん打撲も)。
 スーツやシューズ等は電磁波防止のための特殊素材が使用されており、かつ、すべてが耐熱繊維素材である(検査あり)。

 スーツやコクピットへのクーリングシステム搭載に制限はないが、重量増を嫌って実際に採用するところは少ない。従って、真夏のグランプリでは、開催地によってはドライバーは容赦ない高気温にさらされる。FGスーツやそのインナーは素材を工夫された高機能のものだが、それでも軽く60度以上にまで上がる密閉されたコクピット内の温度で、脱水症状や熱中症に苦しむドライバーもいる(ここでもわずかながら女性の方が有利であるという説もある)。
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 ドライバーの体重は、基本的に軽ければ軽いほど有利とされる。女性の場合は体格も小柄であることが多いため、コクピット容量を小さくでき、マシンの設計に幅ができる。
 ただしフォーミュラ競技であるFGでは、最低重量規定により、軽い分の重量を補うために重りを載せなければならない。バラストは、マシンの荷重移動に有利なように、モノコック下部や腰部、両脛等に積載される。比較的自由にマシンの重量配分を決定できるバラストは、多く積めるパッケージ(マシン+ドライバー)であればそれだけ有利である。

 上位のチームは、大きく重い男性を乗せてもなお、高い戦闘力を持つマシンを生み出すことができるが、中堅以下のチームでは、女性を乗せることで少しでも無理なくアドバンテージを得ようとする傾向がある。
 いったん女性を乗せることを前提にマシンを作ってしまうと、なかなかその呪縛から抜けられなくなる、という側面もあるようだ。

 重量に関しては理論上、女性の方が絶対的に有利なはずだが、これまでのところ上位4チームが女性を正規ドライバーに採用した例はなく、少なくとも観客から見ればその有利不利は確かなものではない。

 近年でいうと、マシンの荷重移動に関しては、物理的な構成要素をいかに効率的に制御するか、というACSのプログラムの優劣がすべてを決するといっても過言ではない。そのため、チームが男性・女性ドライバーの選択を決定する要素は、スポンサーの意向であったり、ギャラの多寡であったり、その他の制約であったり、他の理由に因ることが多いようである。

■ ルール(競技レギュレーション)
[コンストラクターズ・タイトル]
参加全10チームが、チーム(コンストラクター)としての順位を競う。
[ドライバーズ・タイトル]
参加全20人のドライバーが、それぞれの獲得ポイントを競う。

 SFGでは上記の2つのタイトルをかけて、チームとドライバーが戦う。
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 競技はポイント制。競技中に相手を“スコア”すると、それに応じた得点(ポイント)を獲得できる。
 参加チームを選抜して(事前に予備予選を行なう)8チームのトーナメントを組み、グランプリ終了時点で決定した順位に応じたポイントをコンストラクターに加算する。

 年間の全戦を通じて、得たポイントの一番多かったドライバーがワールド・チャンピオンとなり、翌年はFGゼッケン・ナンバー「1」をつける。
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 SFGでは競技中にホイール交換(正確にはタイヤ交換)が認められている。

 SFGでは競技中にエネルギーパック交換が認められている。容量に制限があるので、回数を減らしたい場合は機体に多く積むが、たいていの場合動きが鈍くなるので不利とされる。

 2機同時にピットインできないので、交換作業中は相方が無防備になる。ピットインに伴うリスクを減らすために、タイヤメーカーやジェネレータ・サプライヤーは、それぞれの製品をより高性能なものにするべく、開発を続けるのである。
■ 射撃戦
 近年のSFGでは基本的に射撃戦以外は行なわれない。
 射撃戦ではペイント弾を使用。射出は圧縮空気による(つまりエアガン)。弾は12発までしか与えられない。1回にチャージできる弾数は6発。ピットインにより、補充できる。

 弾を撃ち尽くした銃を捨てることは禁じられている。


 照準の自動追尾などのドライバー補助装置は認められない。ドライバーはモードを切り替えた場合のみ、照準操作を行なうことができるが、どんな手段であれ(レバー、視線誘導等)、激しい機動中にそれを行なうことは困難であり、位置取りと接敵が勝負のすべてを決める。そのためたとえ数十発の弾倉を持っていたとしても、競技中に実際に弾が発射される局面はそう多くはならない。

 弾の外見はほぼジュースの350ml缶と同じ(射出時にはシュッポンと音がする)。

 弾の初速はそれほど早くなく、観客の肉眼で弾道が捉えられるほどである。グラウンドと観客席の間は30mほど空いており(グラベル)、高さ5mほどの金網で仕切られている。ただし、一部の競技場はコンクリートウォールのすぐ内側がグラウンドになっている場合がある。
 グラウンドの一番端から斜め45度の角度で観客席へ向けて発砲しても必ず金網で止められる射程と射出力であることがレギュレーションで定められている。
■ スコアについて
 1ゲームは30分1本勝負。相手の両ドライバーをスコアすると勝ち抜け。

 射撃戦ステージでは、コクピット・ブロックに弾頭が命中すると“スコア”。命中判定はスチュワードの目視による。脚部および腕部は、カウンターウェイトなどの副次的構造品以外の部分に命中すれば“有効”となる。有効は2発で“スコア”とされる。
 ちなみに2発の間隔は1分以上と定められている。つまり1度目の命中(有効)の後、1分以内の命中は無効。最後の命中から再び1分を計る。このインターバル・ルールを利用してピットインを行なうことも多い。
 格闘による打撃もスコア(または有効)になる。

 バランスを崩して転倒(ダウン)するとカウントが取られる。
 その場合、20カウントでスコア(相手チームの両ドライバーにその試合の1有効分の得点を加算。相手の残機が1機の場合は、全得点を加算)。
 ダウンした時の姿勢にもよるが、ドライバーエイドのシステムがほとんど認められていないFGでは、どんな一流ドライバーでも再び立ち上がって戦闘再開することは困難である。またパートナーが手を貸すことが認められているが、これによって両機が転倒してしまうこともあるため、実際にはほとんど行なわれない。

 ゲーム中にマシンが擱座(リタイア、20カウント)するとフルグラウンド・コーションとなり、回収のための車両とセフティ・ギア2機が出動する。セフティ・ギアは3脚の特殊な形態をしている。セイフティ・ギアが場内にいる間は、双方のチームはそれぞれのピット前エプロン・エリアへ待避する。

 イエローフラッグが振られた瞬間から、味方への武器の受け渡しは認められない。たいていの場合、イエローフラッグ中に両チームはピットインする。

 ピットインしてから3分を経過してもピットアウトできない場合、そのドライバーは失格(リタイア)となる(ポイントの扱いは擱坐と同じ)。

 リタイアしたマシンのポイントは、相手チームの残っている(スコアされていない)ドライバーに均等に振り分けられる。すでに片方がそのマシンから有効を取っていた場合でも、残りの有効はもう片方のドライバーに渡されることになる。そのため、マシンのリタイヤによってもたらされるポイントが選手権の行方を左右することもあり得る。
■ FGグランプリ
 SFGグランプリはトーナメント制で、負け組同士も逆トーナメントを行ない、1位~8位の順位を決定する。獲得順位により、コンストラクターに以下のポイントが加算される。

 1位 15p
 2位 11p
 3位 8p
 4位 6p
 5位 4p
 6位 3p
 7位 2p
 8位 1p

 つまり予備予選にさえ勝ち残れば、チームはグランプリ開催期間には必ず毎日1試合ずつ戦うことになる(下位のカードになればなるほど、早い時間に行なわれるのは言うまでもない)。
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 ・予選
全8チームを、現在のポイントランキングで上位グループと下位グループに分け、それぞれの中でランダムに組み合わせを決め、対戦を行なう。

 ・準決勝
予選を勝ち上がった4チームを2つに分けて対戦する。その際、あらたに抽選を行なう。
ホワイトライン
 トーナメントは予選(1回戦)、準決勝(2回戦)、決勝(3回戦)とし、各回戦に勝利するとドライバーに以下の得点が加算される。

回戦総得点1スコア1有効
1回戦(予選)4p2p1p
2回戦(準決勝)8p4p2p
3回戦(決勝)12p6p3p

 相手チームの1人のドライバーをスコア(または有効)することで、それぞれの回戦で上の表中の「1スコア(または1有効)」のポイントがドライバーに加算される。

 有効1を獲得すると、それぞれの回戦の有効の得点が(上の表中)それをGETしたドライバーに加算される。よって、2ndドライバーが1stドライバーよりもポイントを多く獲得する場合もあり得る。また負けた方のチームのドライバーも、この有効を獲得することで辛うじてポイントを得ることができる(よって年間に全チームが得た総得点は、毎年異なるものになる)。

 仮に1人のドライバーが全戦でスコアして優勝した場合、4+8+12=24p の得点となる。準優勝のチームにおいても1人のドライバーがそのグランプリでのすべてのポイントを得たとすると、4+8+9=21p の得点である(優勝ドライバーに最後の1有効を与えられなかった分の3pがマイナス)。
 さらに解説すると、優勝チームの2人のドライバーがすべての回戦で半分ずつのポイントを得ていた場合、準優勝のチームのドライバーとポイントが並ぶ場合があり得る(2+4+6=12p のため)。

 3位決定戦には1回戦の得点が適用される。5位以下の決定戦では得点はつかず、その結果によるコンストラクターのポイント加算のみが行なわれる。
■ SFGに関する組織
■ FIFC (Federation of International Formula Gear Competition)
 国際フォーミュラギア競技連盟。FGの興行を統括する組織。

 発祥は全チームがプライベートであったが、すぐさまF1と同じように格好のメーカー宣伝の場所として利用されるようになり、組織も整備されて世界的な興行へと発展していった。現在はいくつかメーカー主導のチームがある。
 現会長はサミュエル・ハーマン。

■ FGCA (Formula Gear Constructors Association)
 フォーミュラギア製造者協会。

 グランプリの主催者や放送局などはFGCAから興行権や放映権を買うことで、SFGグランプリを開催、または放映している。
 現会長はローランド・リスマン
■ おまけ 「物語世界におけるロボットの軍事利用」
 FGは戦争に利用できないのか、という疑問に対しては「微妙」としか答えられない。
 FGマシンはたしかに高性能だが、兵器として見るにはいささか脆弱すぎると言わざるを得ない。各国の軍が注目していることもたしかだが、それはFGマシンに利用されている個々の技術に関してであり、そのままFGマシンを実戦に投入できるなどと本気で考えている者は皆無である。

 その理由を以下に挙げる。

1:運用時間が極端に短い
FGの運動性やスピードは、徹底的に軽量化されたボディのおかげである。基本的にボディワークはカーボンやFRP製であり、実弾の直撃に耐えうるものではない。これを装甲にすると重量は倍になり、稼働時間は単純に半分になる。将来的に画期的なパワーソースが発明されない限り、この問題は解決されないだろう。

2:物資運搬能力が低い
火器(砲弾含む)の類いを多く携行できない。持っても動けるが当然重量増となり、さらに運用時間が短くなる。
ちなみに、FGマシンは整備されたスタジアムのグラウンド上で動作するために設計されているため、2脚歩行といえど、実際はそれほど悪路走破性は高くない。FGマシンの脚部関節は、曲がるためというよりはバランスを取るために動くようになっているだけである。あらゆる地形で運用を行なうには、まったく別の設計をする必要がある。なお、PCSとACSによる荒地走破性のポテンシャルはそれなりに高い。

3:メンテに莫大な手間がかかる
ユニット交換で整備の手間を軽減したとしても、クレーン等の設備がなければそれも不可能である。擱坐率の高さの割に回収が難しく、現場での整備も困難では、使うのはためらわれるであろう。

4:使用する局面がない
ロボットが市街地戦に有効であるとの論理は筋が通っているようだが、旧大戦の時代ならいざ知らず、実際には都市制圧などは制空戦に勝ってしまえば、あとは現行の兵器と歩兵だけで事足りるはずである。少なくともわざわざロボットを使う必要はない(人員的に1対1で等価である上、パイロット養成には手間と金がかかる。ただし、ロボットが無人であれば意味もちがってくる)。ましてやロボット対ロボット戦は非現実以外の何でもない。

 以上の理由から、FG世界では、人が搭乗するロボットは特殊作業以外では使われない。汎用性の高さでロボットには兵器としてのアドバンテージがあるとする意見もあるが、はっきり言って兵器が汎用であっても無意味と筆者は考えている。
 ギアの使用は、警察、レスキュー、建築、造船・航空宇宙産業等が主体である。
■ おまけ 「FGという興行自体の現実性」
 FGは競技用のロボットである。フォーミュラ、と名が付いているから重量級マシンや火器重視のマシンなどのバリエーションはあり得ず、スマートで繊細で、脆い(兵器は脆くできる限界があるが、FGマシンの場合は弾が当たっても操縦者に生命の危険がないからそれが許されるのだ)。
 フォーミュラという決められた枠組みの中で能力を追求していくタイプのロボットは、これまでアニメや小説の中ではそれほど登場していないように思う。あらゆる兵器にはそれなりに研ぎ澄まされた美しさがあるが、厳しい制限の中で他よりも優れた性能のものを生み出さねばならないフォーミュラ・マシンには、それらとは別の鋭い美しさがたしかに存在する。

 そこがFGの唯一の存在理由である。考えてみればF1などのモータースポーツも同じだ。車があれほど速い必要はないし、F1マシンは現実に公道を走ることができない。ものすごく淡泊な人間の意見を借りて言うならば、「世の中に必要のないもの」である。

 だが逆に言えば、その必要性のなさこそがロマンなのだ。一種の馬鹿馬鹿しさと言ってもいい。
 筆者はロボット戦がこの世に存在できるとすれば、おそらくその馬鹿馬鹿しさに依らねばならないだろうとさえ思っているほどだ(『ガンダム』はミノフスキー粒子、『サクラ大戦』なら霊力、といった“馬鹿馬鹿しい”理由によってのみ、ロボットはリアルに存在できる)。

 ドライバーが腕を磨き、技術者が血眼になってマシンを開発し、ビジネスリーダーたちが大真面目に億単位の金を出資する──。そういう“大人の世界の幻想”という意味では、あらゆるビッグ・スポーツに通じるものがある。

 FGは、少なくとも戦争にロボットが登場するよりも現実的だと考えるが、いかがだろうか?
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